ゆのゆ
著者・こうちゃん
「よしっ風呂行くか!」
「えー今日も行くのー。あそこ熱いからいやだよ」
「ごちゃごちゃ言ってねーで準備しろぃ。コーヒー牛乳買ったるから」
僕は下着とタオルをもって、既に靴を履き始めている。
「お父さーん、まだー。早く行くよー」
父は僕の頭を優しくたたいて
「現金な奴だな」
と笑っている。
湯煙の中、僕の記憶はいつもここで途切れる。
お湯につかる。じんわりと体にぬくもりがしみわたる。なごりおしいが腰を上げて次は水風呂へ。刻々と冷えていく体。皮膚がヒリヒリする。指先の感覚が無くなってくる。これは危険と感じ、移動する。
じんわりと体にぬくもりがしみわたる。
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父のぬくもり。今ならわかる。僕を連れ出した父の気持ち。
あの頃父と乾杯したこの場所で僕はあの頃の僕を待つ。
「お父さーん。熱かったよー!」
床に濡れた足跡を残して走りよってくるチビ。後ろからタオルを頭に巻いた彼女。
「熱かったか。なんか飲むか?」
「うんっ。コーヒーぎゅうにゅう!」