夢に見た回転寿司
春雨スープを食べた。春雨スープしか食べなかった、2日目の夜。
この街に引っ越してきてから15kg太った。古い長屋の多く残る、この街。都内で地震が起きた時の建物倒壊危険度ランキングで一位を取ったこともある。「もし地震が起きた時、こうちゃんはこの家から逃げられるの⁉︎」
友達が言ってきた。足の悪い僕。階段を走って降りることはできないし、2階から飛び降りることもできない。
「よし、こうちゃんが痩せるためにみんなでダイエットをしよう」
それで、出来たのが『京島ヘルシー部』。
部の活動内容としては、ヘルシーな行いをした人に「ナイスヘルシー」と送り合う。それだけだ。
1日目。他のメンバーは、浅草まで走ってきただとかサラダチキンを食べたとかをグループメッセージにポンポン上げてくる。その度に2、3人から「ナイスヘルシー」とメッセージが飛ぶ。僕は何もできていない。いや、お疲れ!と上司に渡されたコーラを飲んでしまったから、それ以上にダメだ。
僕は「ナイスヘルシー」が欲しかった。
そこで、2日目の夜。春雨スープしか食べなかった。写真を撮り、グループに上げる。「ナイスヘルシー」をいただく。
普段よりも食べている量は少ないはずなのに、食後眠くなってきた。食べた後、すぐ眠るのはまずい、と思い、銭湯に行く。
身体をマッサージしながら、温冷浴を2往復。時間にして1時間ほど経った頃、お腹の辺りが寂しくなってきた。お風呂を出たところで、待合室にヘルシー部のメンバーがいた。ダイエットを一度成功させている男だ。雑談
「お腹減ってきちゃった」
「ほら〜春雨だけじゃ足りないと思ったよ。急激に減らすのは良くないからね」
「はい、気をつけますよ。それで、今鯖缶を食べたい気分なんだけど、夜食としてはアリですかね?」
「うん、いいんじゃない。オイルに浸ってるツナ缶だと油絞ってから食べてほしいけど、水煮なら良いよ」
さよならをして、銭湯を出る。向かう先には、スーパーか家かの分かれ道。お腹に語りかける。お前は本当に腹が減っているのか?時間が余ってて、その時間を満たしたいだけではないのか?と。お腹は言う。それはお前次第だろう。俺はいつもより量が少なくて、びっくりはしたが、十分満たされてはいる。お前が暇で仕方ないから、空いている風に感じるだけではないのか?お前は心が空腹なんだ、と。
まぁよく考えて、今食べたら、すぐ眠るわけで、そうしたら銭湯に行った意味がない。お腹をポンと叩き、家に帰る。スマホを触る余裕もないぐらい眠い。すぐ寝につく。
行列に並んでいる。前の人物が呼ばれて、薄橙の室内に入っていく。僕も呼ばれ、一人大きな机の前に腰掛ける。横にはレーンに運ばれる寿司。一皿取ったところで目を覚ます。
6月記