共助
著者・こうちゃん
赤いライトが点滅し、レンズが向けられる。
この街には折りたたみ傘を素手で持ち歩く男がいた。なぜ手に持って歩くのか。折りたたみ傘の強みといえばカバンに入れることができ、手周りの荷物を減らせることにあるのではないか。撮影者の疑問に男は持論を展開する。
「いざという時、武器にもなるからね」と。
ビニール袋をマントにする猫がいた。猫には肉球があり、大概のところには登れるから、マントはいらないのではないか。撮影者の疑問に猫は持論を展開する。「にゃーにゃー」と。

男の唯一した悪いことは、バイト先の回転寿司屋に忍び込んで、お刺身パーティをしたことだ。これは実は、バイト先の店長に指示をされ、悪ふざけでやったことなのだが、そのことがバレた店長はクビになり、なぜか男を逆恨みしている。男は呑気に言う。「店長には悪いことしちゃったな。猫でも見て和んでくれればいいのにな」と。
男は部屋で猫と二人暮らしをしている。猫は1匹と数えるはずで、二人暮らしというのは間違っているのではないか。撮影者の疑問に男は答える。
「こいつの鳴いた方向の道の先におっきな看板が落ちてきたり、新しくできた居酒屋で出された酒に向かって鳴いて、酒を倒したものだから、なんだ!と叱ると、酒の落ちた先の床が溶けて穴が空いたりと、不思議なものでこいつが命を助けてくれるんだ。俺にとってこいつはヒーローで、大切な家族だ」と。
猫は男と離れない。雨の日も風の日も男と一緒に出かける。ある日、路地裏で粗相をしていた猫は、フードを被った男に暴力を振るわれた。その時男が折りたたみ傘で威嚇をし、守ってくれたのだ。
撮影者は猫に聞く。あなたにとって男はどう言う存在ですか?と。猫は言う。「にゃーにゃー」と。
文/著者 プロフィール
