雷小僧のいたずら
チヒロちゃんは公園でけん玉遊びをしています。その様子を、雷小僧が木の陰から覗いていました。
チヒロちゃんは、雷小僧に近づいて、けん玉を差し出します。
「おいらにも、人間の遊びを教えてくれるのか?」
雷小僧は目を輝かせて、けん玉をはじめます。ところがいくらやっても上手くできません。力任せに振り回すと、背中の太鼓にひっかかってしまいました。
チヒロちゃんはお手本に色々な技を見せます。すると雷小僧は下唇をぎゅっと噛みました。
「おいらを怒らせると大変なことになるんだからな」
そう言うと、雷小僧は雲に乗って帰ってゆきました。
その夜、大雨が降って、雷が鳴りました。
次の日になると、雨は止んで青空が広がっています。
お巡りさんが見回りに出かけようとした時です。交番に背広を着たおじさんが駆けこんできました。
「すみません、私のおへそを見かけませんでしたか?」
おじさんは肩で息をしています。
「どんなおへそですか?」
「十円玉くらいの大きさで、小さなゴマがついていると思うのですが……。朝起きたらなくなっていたんです」
お巡りさんは、ダンボール箱の中を探します。
「こちらには届いていないようですね」
「困ったなぁ」
おじさんは頭をポリポリ掻きます。
「困ることはありませんよ。私もありませんから」
お巡りさんはそう言ってお腹を見せました。
デラシネ書館
藤岡真衣