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もう一つの潮騒の街

2023年10月21日 最終更新日時 : 2024年4月29日 林 光太郎林 光太郎

著者・林 光太郎

 この街では四六時中、波の音が流れている。

きっかけはある老人の発言からだった。

「昔は北十間川から南は海に面しておった。それを幕府めが埋め立てしおって、墨田区民は海を臨めなくなったんじゃ。じゃからわしは、墨田区に海を取り戻したいんじゃ」

厄介なことに、その老人は墨田区で長老と呼ばれるほどの人物で、このはちゃめちゃな発言にも区側は耳を貸さないわけにはいかなかった。

会議に会議を重ねた。

 まず、海を持ってこよう!という意見が出た。江戸時代の風景に立ち返ろう!と。

 具体的には埋め立てて出来た土地を海に戻そう、と区の係長クラスの人物が発言したのだ。
ではどうやって?

 大半の者は、この荒唐無稽な意見を陰で嘲笑した。しかしそこは係長の発言。無下には出来ない。一年目の新人が綿密な検討に入った。

 そこで分かったのは、墨田区役所から一番近い海にある夢の島まで、距離にして10km弱離れている。さらに東京湾から墨田区の間にはドデカ区の江東区が横たわっている。江東区に立ち退いてもらって、海を引っ張ってくるのは、とてもじゃないが現実的ではない、と結論づけられた。

では湖を作るのはどうか?と意見が出た。墨田区内に湖を作り、それを海と見立てるというのは?と。しかし作るとしても、場所の都合上こじんまりとしすぎてしまう。それでも良いか、提案者である老人に聞くと

「東京ドーム一個分は欲しいね」

と言ったため、却下された。

 どうするどうする…区の者達は頭を悩ませ続けた。

そんな中、隅田川がそもそも海に流れているのだし、それはもう実質海なのではないか、と言い出した者がいた。波も立っているしね、と。区の者達は歓喜した。

意趣返しのつもりで、老人に伝えに行くと

「確かに!でも川沿いだけでなく、どこでも波の音が聴きたいのぉ」

と目を薄め、試すように言い返したら。区側は疲弊していた。もうめんどくさい!となり、区内全域の防災無線から波の音が流れるようになったのだ。

 初めのうちは全国ニュースにも取り上げられて、物珍しさに観光客が増えた。これはいける!そう確信した区は、隅田川に大量のウミネコを放した。また物珍しさに観光客が増えた。

だが、それもいっときの話。皆すぐに飽きた。

 波の音といっても、海のない場所から流れる音だ。その無意味な音にノイローゼになる者が増えた。

 さらにウミネコによる騒音。糞尿による汚れ。次第に市民は辟易していった…。

時は過ぎ、20XX年。

きっかけはある老人の言葉からだった。

「この街は昔落ち着いたものじゃった…。波の音もなく、静か。ウミネコもいず、綺麗。街を歩けば挨拶が行き交う、人情の溢れるところじゃった…。じゃが、区の馬鹿どもが風流だとか言い出したせいで、無意味な波の音を流しだし、ウミネコが街を汚し、今この有様じゃ。じゃから、わしは考えた!今や制御不能となった防災無線をジャック。さらに超音波を流し、ウミネコをこの街からいなくさせる。そのためにこの街に世界一高い鉄塔を築くんじゃ!」

もう一つの潮騒の街

文/著者 プロフィール

林 光太郎
林 光太郎
長野県塩尻市出身。
人生どん底の頃、小説を読み、生き長らえた経験から、誰もが気軽に小説を読めるようにするため創作活動に勤しむ。古民家をリノベした本屋「ものはいいよう」を不定休で開いている。
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