すみだ地域学セミナー 隅田川アートライフ
9月21日(土)に第1回目の講座「粋を育む花街文化~向島より」が小林綾子氏(料亭「きよし」女将)を講師に迎え、向島の花街の文化や現状、今後のあり方などをお伺いすることができました。
かつて最盛期には東京だけで46カ所を数えた花街も現在では、芳町、新橋、赤坂、神楽坂、浅草、向島の六花街となっています。
後継者問題や土地の高騰なども含む時代背景のもと衰退を余儀なくされる現実もあります。向島の料亭も昭和40年代初頭には100軒を超えた料亭・待合も現在では12件の料亭となりましたが、90名以上の芸者が登録されていて六花街の中でも最も大きな花街とされています。
向島花街に生き続ける日本の文化
失われつつある日本の伝統が花街には今でも大切に生かされています。その代表となるのが、“衣・食・住”。
きものには、職人が手間暇をかけて仕上げる繊細な美や技術が多く施されています。毎日きものを着てお客様をもてなす花街では、失われつつあるきもの文化が今も生き続いています。
また、料亭は会席料理を主としておもてなしをしています。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。しかしながら、料理学校の学生が100人いたとしたら、日本料理を志す人は2名程度だといいます。料亭では、日本独自の季節の素材を生かし、目と舌で楽しむことできる繊細で工夫に凝った日本料理を守り続けています。「子供の頃から日本料理に親しんでもらうことを目的に会席料理によるマナー教室の提案できたら」と日本料理の普及を考える小林氏。
小林氏が営む「料亭きよし」は、昭和24年に創業され、当時のままの建物が守りぬかれています。趣のある木造母屋には、伝統ある日本建築の技術や装飾、伝統工芸品が随所に垣間見られます。
向島花街には、随所に日本の伝統が残りそれを守り続けています。
セミナーでは、質疑応答も交え、向島花街の文化の話とともに、芸の話、遊び方、楽しみ方などを聞くこともできました。
今後の花街の発展
大切な日本の伝統文化を継承する花街・料亭も後継者問題や土地の問題、規制により新規開業の難しさなど今後の課題も多く残されています。
“一見さんお断り”というイメージのある料亭ですが、それにはお客様が料亭という別世界でゆっくりと日常を忘れて楽しんでいただきたというおもてなしによるものです。
向島の料亭では、多くの方に親しんでもらえればと、地域との関わりや体験コースなどを設けています。
「今後も地域に愛され、多くの方に支えてもらいながら、日本の伝統文化の継承を大切に守り抜いていくことを考えていかなければならない」と小林氏。
今回のセミナーでは、近くて遠い向島花街の歴史、文化、地域との関わり、おもてなしなどを垣間見ることができました。
すみだ地域学セミナー 隅田川アートライフの今後の日程
■第2回 9月 28日(土)
ひとつのまちを目指して浅草と東京スカイツリー®をつなぐにぎわいの東西軸づくり(終了)
■第3回 10月 12日(土)
“すみゆめ”って何でしょう?
■第4回 10月 26日(土)
隅田川総舞台化計画