「この先10年間も、のびのび自由に。クリエイティブなまちをつくり続ける」〜祝!すみだクリエイターズクラブ結成10周年〜
文:田中未来

はじまりは3人。
今では100人以上のメンバーが在籍
すみだのクリエイターが集まり、ゆるく関わり合いながら活動するネットワーク「すみだクリエイターズクラブ」(通称クリクラ)が、2013年の発足から今秋で10周年を迎えました。
その集大成として、クリクラのこれまでの歩みをたどる展示会『愛と品質の10周年展』が、WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO内のふくろう360°カフェにて開催されました。(会期2023年9月20日〜30日)



クリクラが誕生したのは、墨田区にちょうどスカイツリーが完成したての頃。発起人は、コピーライターの三井千賀子さん、プランナーの三橋美也子さん、同じくプランナーの三田大介さん。三人合わせて「みめぐり」の愛称がついたグループを中心に、他数名の同志と共に周囲に呼びかけをしたのがはじまりです。

クリクラ発足以前から、墨田区の地域ブランディング事業「すみだモダン」の立ち上げに関わってきた三井さん。地元すみだの魅力に気付いたのは、この頃だったと語ります。
三井さん:「仕事を通じて職人や町工場の方にインタビューをしていると、なんて面白いんだろう!と感じることばかりでした。自分が住んでいる場所だったのに、その魅力を知らなかった。だから、このまちの面白さを多くの方に知っていただいて、すみだ全体が素敵に見えるように、外に向けて発信できるようなことがしたいと思ったんです」
墨田区に住むクリエイターを集めて、まちのイベントをしたり、まちのアートを盛り上げていきたい。技術や経験を持つ人たちが集まったら今よりまちが面白く、さらに元気になっていくはず。そんな三井さんの思いに共感した三橋さんが、当時を振り返ります。
三橋さん:「私にとって仕事は都心でするもので、墨田区は帰ってくる場所でした。でも千賀子(三井さん)が、このまちにもきっとクリエイターはいるはずと言ってくれた。とにかく集めてみよう、ということで、はじめはどうなるかわからなかったけれど、いろんな人に声をかけたら、どんどんつながっていった」
チラシ作りをして、はじめて開いた集会には、30人ものクリエイターが集まったのだそう。あれから10年。クリクラには110名以上のメンバーが在籍しています(2023年9月現在)。
キーワードは「愛と品質」。
すみだのまちを愛して、
プロとしてのクオリティを発揮する
クリクラ立ち上げと同時に設定したキーワードは「愛と品質」。地元への「愛」を持ち、プロとしての「品質」を保つこと。どちらも両立させながら活動を続けることがモットーです。
在籍メンバーの職業は多岐にわたり、WEBデザイン、アーティスト、プランナー、グラフィックデザイナー、カメラマン、ライター、映像、建築関係など実にさまざま。それぞれのメンバーが受けた案件で、自主的にチームをつくって仕事を進めるスタイルが主流です。これまでもクリエイター同士がゆるくつながり、行政や地元企業と協働しながら、多種多様なプロジェクトを手掛けてきました。過去にはクリクラを通じて有名漫画家と一緒に仕事をしたり、区のプロモーションサポート事業に関わったりすることも。
『愛と品質の10周年展』会場では、活動履歴が一目でわかる記念冊子の配布をはじめ、クリクラメンバーがこれまでに携わってきたプロジェクトや、クリクラ自主企画イベントの歴史を振り返るパネルが展示されたほか、10周年記念映像も公開されました。

9月22日(金)に行われたオープニングパーティーでは、DJブースや紙芝居、タロット占いのスペースも設置され、メンバー同士の交流がにぎやかに行われました。さらに、2018年より毎年恒例の自主企画イベントとなった『すみだクリエイターズクラブTシャツ展』の作品販売や、若手アーティストの自己PRを兼ねたポストカードの無料配布も。会場には、墨田区役所職員の方々や、民間企業の社員さんも訪れ、和気あいあいとした会話を楽しんでいました。


クリクラ在籍メンバーの方々の声

▲「墨田区は自転車と喫茶のまち。打ち合わせ場所まで自転車で向かい、話し足りない時には近所の喫茶店へ。コーヒーと自転車でお互いの拠点を行き来できるのがクリクラの良さ」(クリクラ在籍10年、アーティスト樋口裕一さん)作品は樋口さんが最近はじめた青写真。
一軒家カフェikkAさんでの個展をきっかけにメンバーとなった、イラストレーターのウシヤマアユミ(牛山歩)さん。(クリクラ在籍3年)「クリクラのゆるさが良い。みんなほわっとしていて優しい人が多くて、居心地が良いんです」

▲オープニングパーティーで軽やかなウクレレ演奏を披露していたのは、墨田聖書教会牧師の石川良男さん。クリクラには加入したばかり。今後は、「Tシャツをつくってみたい」。
最近メンバーに加入したイラストレーターのmaiさん。会場ではポストカードを出品していました。「地域のつながりや活性化に関わることが好き。これからもこのまちで活動していきたい」

オープニングパーティーの様子を記録に収めていたのは、カメラマンの馬杉真理子さん。「クリクラで人生が変わった。正しい金額で仕事を受けることを学んで、それから本格的に仕事らしい仕事になった」(クリクラ在籍10年)
「クリクラのフラットなところが好き。これまで神出鬼没の紙芝居屋としてあちこちフラフラしていましたが、やっぱり地元のすみだでしっかり活動していきたい」(クリクラ在籍3年、紙芝居師ちっちさん)

「他の区にはない、めずらしいネットワークだと思う。クリクラの活動は地元を応援している気分になるし、クリエイター同士のつながりもできるからありがたい」(クリクラ在籍5年、WEBデザイナー松本慎一さん)
オープニングパーティーの三井さんの挨拶では、印象的なメッセージも。
三井さん:「クリクラメンバーは何かを生み出す力がすごいんです。一つテーマがあると、話し合いの場でも次から次へとアイディアが出てくる。実現に向けてゴールや目標が決まれば、メンバーの一人一人が経験や技や感性を駆使して、すごい勢いで良い雰囲気にまとまっていく。その秘訣は、上下関係がなくて、みんなが自由にものを言えて、お互いに尊重したり気遣ったりする、そんな雰囲気。それがクリクラなのかなと思いつつ、それってすみだという、このまち全体の空気感かなとも感じています」

人とつながる墨田区でクリクラは育ち、
今後は、さらなる品質向上を目指して
現役のクリエイターだけでなく「クリエイティブなことがしたい」という思いを持ち、普段は会社勤めの方も在籍しているのが、クリクラのもうひとつの側面。Tシャツ展のTシャツ制作に携わったり、ライターとして活動されている方もいるのだとか。
クリクラは、「一回入ったら永久会員。結婚しようが引っ越そうが、とりあえずいつでも戻って来られるゆるさが売り」と三橋さん。その一方で、「まちへの思い(愛)があることは必須。外から素敵だねと言われるチームであるために、この先の10年は品質向上に向けて頑張っていきたい」。

三田さんからは、「『すみのわ』や『みんな北斎プロジェクト』といった福祉プロジェクトも、クリクラの仲間と一緒だったからこそ取り組んでこれたと思っています」とコメントも。
クリクラ発起人の三井さんは、10周年記念のオープニングパーティーを、下記の挨拶で締め括りました。
「人とつながる墨田区でクリクラは育ちました。まちの皆さまと交流したり、一緒に仕事をしたり、応援していただいたりしてクリクラは育っていきました。これからの10年も、のびのび自由に、まちの皆さまと一緒に新しいものをつくり続けていきたい。他のどこにもない、クリエイティブなまちをつくっていきたい」


すみだクリエイターズクラブの公式ホームページでは、メンバーのプロフィール詳細や活動実績も公開中。クリクラに入会をご希望の方は、問い合わせフォームからご連絡を。
<すみだクリエイターズクラブ公式ホームページ>
https://sumida-cc.com
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なお、現在開催中のすみだ向島EXPO2023会場にて、『愛と品質の10周年展』が引き続きご覧いただけます。秋の散歩がてら、ぜひお立ち寄りください。
※展示は10月14日以降となります。詳細は決定後にホームページ・SNSでお知らせします。
https://sumidaexpo.com/