未来ある子どもたちに、舞を通して日本の歴史や伝統を伝えていきたい
文:田中未来
「珊瑚ノ宮」代表・橋本佳奈さん
向島で生まれ育った橋本佳奈さんは、墨田区の神社仏閣を中心に、古より伝わる日本の姫巫女様方を舞で表わす「珊瑚ノ宮」を設立。
国政の場に勤める傍ら、厳かなる神社仏閣に舞を御奉納する活動をしています。
祖先から代々受け継がれてきた所作を元に作られた「宮ノ舞」や、向島で開催している舞のお教室についてお話を伺いました。
-- はじめに、珊瑚ノ宮の設立経緯について教えてください。
橋本:2021年、母方の家系が代々神官を務めてきたご縁もあり、自分が受け継いできたルーツで、今の社会の中で、役に立てることが何かないかと思ったのが発端です。
日本は世界で最長の歴史を持つ尊い国です。そのことを、未来を担う子どもたちに伝えたい!という思いが強く、最古の書物「古事記」や「日本書紀」に描かれている姫巫女の物語を表わす舞を、母と二人で作り、まずは地元の牛嶋神社さんへお納めしたいという話をしていました。そんな中、コロナウイルスの襲来により自身や家族も感染し、これまでの当たり前の暮らしが一変したことをきっかけに、無事であったことの感謝と、一日も早い安寧な日々の訪れを祈念し奉納の活動を始めました。
また、身近な方々からの「ぜひ自分たちにも舞を教えてほしい」という声に背中を押されたことで、2021年の夏に「珊瑚ノ宮」を設立いたしました。
-- 珊瑚ノ宮の活動はどのように広まっていったのでしょうか。
橋本:まずは、ご先祖さまからいただいていた「詠(うた)」に合わせて舞の所作を組み合わせることからはじめました。音楽は母と友人の方に試行錯誤しながら用意していただき、衣装はご縁のある方々からお譲りしていただくなど、段々と手づくりの舞が完成していきました。その後、地元の牛嶋神社様や湯島天神様などで奉納舞を披露している間に、日本の歴史が好きな方や、偶然、自分たちの舞を見かけた方などにお声がけいただき、徐々に仲間が増えていきました。
-- オリジナルの演目「宮ノ舞」とは、どのような舞なのでしょうか。
橋本:「古事記」や「日本書紀」に描かれた姫巫女様たちの生涯を表したものが「宮ノ舞」です。母方の家系には、代々家に伝わる舞や所作があり、宮ノ舞は、舞を見るだけで、その姫巫女様方のご生涯がわかるような振り付けになるように、その所作を組み合わせています。
-- 宮ノ舞の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
橋本:宮ノ舞は、日本の尊い歴史や伝統を子どもたちにも知っていただきたく、古事記や日本書紀の「天岩戸」などの物語を舞に表しています。巫女舞は本来、自然の恵みへの感謝や、亡くなった魂に祈りを捧げる役割を担っていますが、宮ノ舞の特徴は、日本の歴史を表わす舞。実際に歴史に残る姫巫女様方のご生涯を表した舞であるということだと思います。
-- 宮ノ舞の音楽には、現代の楽器が使われているのも印象的です。
橋本:音楽を用意してくださったのは、母の仕事仲間の方ですが、プライベートでは私のカラオケの先生です。はじめに舞で表している姫巫女様の物語を知っていただいてから、実際に舞を見ていただき、それに合わせた音楽を作っていただきました。ギターや現在の弦楽器が使われているのは、宮ノ舞ならではかもしれません。
-- 橋本さんが舞を舞う際に心がけていることは、どのようなことですか。
橋本:宮ノ舞の中でも、最初に完成したのが「必勝祈願」という八幡神のお母様・神宮皇后の舞です。「必勝祈願」では、身重の体でありながら将軍として軍隊を率いて海を渡られ、三韓討伐に向かわれる勇ましい神宮皇后のお姿を舞に表しています。歴史の文献には載っていない口伝で伝わった神功皇后の想いを込めて舞わせていただいております。つい先日には、亀戸天神社様でのご奉納をきっかけに、「私も日本のお姫様の舞を舞いたい」と、幼いお子様からお申し出がありました。宮ノ舞を見ていただき、姫巫女様方の生涯に思いを馳せていただくには、まだまだギャップがございますので、日頃から、尊き姫巫女様方に失礼のなきよう、美しい大和撫子のお姿を想い、より一層精進していきたいと思います。
-- 橋本さんと舞の出合いはいつ頃でしょうか。
橋本:舞は生まれた時から身近にありました。幼少期から、御神仏(自然の恵み)に感謝すること、礼儀や作法など、生活の中にさまざまな教えがありました。とくに、宮ノ舞につながるものとしては「すり足」でしょうか。すり足は、舞の教室でもお弟子さんに基礎として教えています。ですが、巫女舞を人前で披露して、神社などにお納めするようになったのは昨年がはじめてのことです。
-- 幼い頃から舞が体に馴染んでいたのですね。
向島の教室では、どのようなことが学べるのでしょうか。
橋本:お教室では「大和撫子の美しさ」をテーマに、舞だけでなく、所作や大和言葉を学んでいただいております。
年齢や運動の得意不得意は一切関係ありません。お弟子さんの中には、神社仏閣の神聖な空気が好きという理由で来られている方もいれば、歴史がお好きな方、さまざまなダンス経験者の方もいらっしゃいますし、遠方から通ってくださる方もいます。舞を通して、体幹が鍛えられたと皆さんに喜んでいただいています。
-- 最後に、今後目指していることや伝えていきたいことを教えてください。
橋本:次の世代、未来の子どもたちに、日本の素晴らしさ、日本に生まれたことの幸せを伝えたい。世界一の歴史を持つという事は、長い長い歴史の中で、先人たちがこの国を守りつないでくれたからこそ、この平和な日本があるのだということ。御先祖様方、お父様、お母様に感謝をして、大切な未来をつくっていっていただきたい。何よりも尊いことを伝えるため、珊瑚ノ宮の活動を続けています。今後は、子どもたちと一緒に、親子でご参加いただけるものを作っていきたいです。
自らの思いを伝えながら、神社やお寺とコラボレーションして、子どもたちの役に立てることができたらうれしいと語る橋本さん。2023年も墨田区の神社を中心に、さまざまな場所で奉納舞を披露する予定があるとのことです。強く美しい姫巫女たちを表した宮ノ舞や珊瑚ノ宮の活動は、YouTubeからもご覧いただけます。
珊瑚ノ宮 ホームページ
珊瑚ノ宮 YouTubeチャンネル