とらわれたニャンコ
時は2XXX年。ニャンコの人気は凄まじく、青天井状態。ニャンコの出てくる動画は軒並み1000万回再生を記録。ニャンコが店長を務める喫茶店は連日大行列を迎えていた。
そんな中、政府は頭を抱えていた。「ニャンコに夢中で国民が我々の話を聞いてくれない‼︎」と。そこで、ニャンコ中毒者と化した国民達から、ニャンコを取り上げるよう「ニャンコバイバイ法」を掲げたが、強硬策ではニャンコ欲を消失させることが不可能と判明。
政府は政策の方向性を一変。その記者会見上で首相は以下の言葉を掲げた。
「虎我、他ニャンコ」
と。
わかりやすく言うと、首相である我は、ニャンコ科動物である虎であり、国民達は皆ニャンコであると。だから、ニャンコ科最強の我の話を聞くのだ、と。
この無茶苦茶な言葉に、1億2000万人の中毒者達は納得し、政府の言葉を聞くようになった(なんせ「ニャンコ」のNyaという音を聞いただけで、その言葉を発した者へかしずいてしまうぐらいだからね)
さぁ、これでうるさい政府はニャンコに迎合したし、ニャンコの天下が来たぞ!!
と思いきや、国民は誰もニャンコを見向きしなくなった。
それもそのはず、国民はニャンコが好きなのではなく、ニャンコという言葉を言う時の「Nya」という音を発するのが好きだっただけなのだ。ようは、ニャンコという存在が好きなのではなく、ニャンコの「Nya」という音を発する自分が好きだっただけなのである。
そこにおいて、国民はニャンコを自分たちのテリトリーから排除しようとし始めた。
それは、「Nya」欲は自分たちで賄えてしまうのだから、飯を食うだけの猫の存在など、邪魔でしかないからだ。そして、囚われ始めた猫達は数を減らしていった。
その最後の一匹は、みなに敬われていた時代を思い出してはほぞをかみ、今もどこかの民家に隠れ、暗くなっては外を見つめ、遠き日の輝かしい日々を思い出しているという。

文/著者 プロフィール
