こんな日々
手を握る。握手の要領で。彼女はモゾモゾと手を動かす。一瞬手を解かれ、すぐに指と指の間を広げて、また手と手が触れられる。僕は彼女のしたいことを察し、指と指を絡ませる。初めは照れくさかった恋人繋ぎも、今となっては、これじゃなきゃ物足りない。何よりフィット感に安心する。僕は親指と人差し指を使って、彼女の指をなぞる。細く、柔らかい。力を入れたら折れてしまいそうで怖い。
商店街を歩く。肉屋から香ばしい揚げ物の匂いがしてくる。彼女が、ショーウィンドされたコロッケを指差し、食べたいそぶりを見せる。前には女性が1人立っている。後ろに並ぶ。
「唐揚げ100gってどんくらい?」
「みっつぐらい」
「じゃあ200」
「あいよー」
テンポのいい会話。
彼女がクスッと笑う。それを見て、僕もクスッと笑う。それを見た彼女が、握る手の力を強めてくる。僕も握り返す。
僕は耳元に口を寄せ
「6つってことは、夫婦で食べるのかな?足りるのかな?足りるか」
彼女はふふふとまた笑う。
順番が来て、コロッケを買う。彼女がコロッケを差し出してくれる。僕は遠慮なく、それを頬張る。熱々ではふはふしていると、彼女がまた笑う。
こんな日々が続けばいいのにと思う。