バービー人形などの人形服を仕立てる『バーバラ洋装』の作家コバリさん
文:田中未来
押上のラブタイムカフェで
バビ撮り写真展を開催
バービー人形を中心に、1/6ドール服を制作する作家コバリさんによる『バーバラ洋装』の写真展『Barbie Goes To…』が、押上にあるラブタイムカフェのギャラリースペースにて、6月8日(木)より開催されます。
昔の洋装店をコンセプトに、2010年より『バーバラ洋装』の名前で活動をはじめたコバリさん。これまでに、ドールショウやI・Doll(アイドール)といった、ハンドメイドのドール衣装や小物を展示・販売するイベントに出店したり、ブログやSNS、通販サイトを通じて自身の作品を発表してきました。
この度の展覧会では、コバリさんがこれまでに訪れた国内外のスポットを舞台に、観光地でバービーを撮り下ろした「バビ撮り」(※バービー人形と写真を撮ったり、バービー人形の写真を撮ること)写真が展示されます。会期中は、衣装の展示販売も予定しているとのこと。
『バーバラ洋装』のことや、バービー人形との出会い、バビ撮りのコツなど、コバリさんにお話を伺いました。
『バーバラ洋装』のデザインは、
垢抜けきれないのが持ち味
-- はじめに、『バーバラ洋装』をはじめたきっかけについて教えてください。
コバリさん:幼い頃から洋装が好きで、小中学校の頃にジェニー(日本の着せ替え人形のキャラクター)のお洋服を、雑誌を参考にしながら見よう見まねで縫っていました。高校生になると次第に自分の興味が人間服の洋裁に移ってしまったのですが、大人になってから久々にバービーに触れる機会があって、その時に面白いなと思うようになりました。
ところが、いざ着せ替えをしようと思ってもなかなか気に入った服が見つからなかった。もっとこんなデザインがあったらいいのに、もっとつくりが丁寧だったらいいのにと感じるようになって、それなら自分で縫ってみればいいじゃない、と思ったのがきっかけです。
店名の由来は、バービーの本名(バーバラ・ミリセント・ロバーツ)から拝借し、古着が大好きなことから、レトロな洋装店のイメージを持たせるために『バーバラ洋装』と名付けたのだそう。オリジナルのフォントロゴは、デザイン専門学校出身の妹に依頼して制作したというこだわりも。
-- 『バーバラ洋装』の特徴はどのようなところでしょうか?
コバリさん:人形じゃないと着られない服がいいなと思っています。リアルクローズ系は、着たければ自分で着ればいいと思っていて。もちろん、人形で遊びやすいようにシンプルなブラウスやスカートもつくりますが、バービー人形は、自分の世界とは違う存在なので、親近感がないんです。だからこそ、実際に人間が着たらコスプレっぽく見えてしまうようなお洋服を意識しています。
-- レトロさも意識してデザインに取り入れているのでしょうか?
コバリさん:基本はレトロなものが好きですが、必ずしもレトロにこだわっているわけではありません。どちらかというと、自分の持つ鈍臭さはからは逃れられないということは忘れないようにしています。どんなに格好つけようと思っても、格好がつかないというのが自分でもわかっているから、ちょっと垢抜けきれないところも、自分の作品の持ち味にするほかないかなと思っています。
生地選びにも気を遣い、コットン生地だけでは表現の幅に限界があるので、ポリエステルやファーにニット、パワーネットなど、さまざまな素材を積極的に取り入れたり、ベトナムや台湾で買い付けた生地や、ヴィンテージの生地を使用することもあるのだとか。
コバリさん:変わった素材や色が派手なもの、とりあえず自分で縫ってみたいと思ったものはどんどん取り入れたい。だけど根底には私特有のダサさがある。そこを無理して隠すのではなく、良いアクセントとして活かすのが一番良いかなって。
縫製の丁寧さにも定評があるコバリさんの人形服。工業用の細い糸を用いて、針も薄地用の細いものをつかっています。縫い目の大きさを細かくしたり、スカートのステッチの幅を一定にしたり。何度も試作を重ねながらシルエットを決めていくと語るコバリさんの洋服は、まさに職人技とデザイン性を兼ね備えたクオリティです。
バービー人形のクセが強いところが好き
-- バービー人形との出会いについて教えてください。
コバリさん:職場で知り合った先輩が偶然、バービー人形のファンでした。その方との出会いをきっかけに段々とバービーの面白さに惹かれたのと、近所の江戸川区にバービーの専門店があることを知ったので、その巡り合わせもご縁になりました。当時は、店内でバービーのお洋服を縫うワークショップが定期的に開催されていて、そこに参加してワンピースやドレスを縫いました。ワークショップを通じて出会った先生に、ドール服のパターン制作から縫い方を一通り教わった経験が、バーバラ洋装の作品づくりにも活かされています。
ちなみに、バービーの好きなところは「色々とクセが強いところ」だそう。そんなバービー人形の生き生きとした表情やポーズを写す「バビ撮り」。写真撮影のコツについても伺いました。
コバリさん:まずモデルとなる人形の顔の向きや目線に気をつけることと、人間として無理のない自然なポーズを意識します。頭から指先や爪先までに、どこかひとつでも向きがおかしいところがあると途端に違和感が出てしまいます。最近売られているタイプのバービーのボディは手首も動かせるのでわりと表情がつけやすく、物を持たせたり、どこかに手をついたりすることもできるんですよ。
取材を行ったラブタイムカフェの店内でも、すぐにポーズや構図を決めて撮影をはじめたコバリさん。首の角度や目線を意識すると、「人の形」を捉えたリアルな写真が撮れそうです。
今回の写真展では、過去のバビ撮り作品及び墨田区のまちを舞台に「バビ撮り」した写真が約20点並びます。コバリさんが過去に制作した衣装も、会場にて販売を行っています。
「バービーを依代に世界が広がった」
2022年より、TOKYO ファッションドール・コンベンション(バービーファンクラブジャパン会員限定参加のイベント)に出店したり、書道家の方とコラボレーションしてバビ撮りをするなど、活動の幅を広げてきたコバリさん。SNSを通じて国内外のドールファンや、『バーバラ洋装』のファンとも交友関係を築いてきました。「バービーを通じて洋裁の見聞を深められたし、海外や英語に興味を持つこともできた。バービーを依代にして世界が広がった」と話すコバリさんに、最後に今後チャレンジしたいことを伺いました。
コバリさん:まだ縫ったことのない、これから縫ってみたいデザインはどんどん発掘して、これ以上はできないなという限界まで挑戦したい。バービーだからこそできる表現、バービーだからこそ着こなせる服をどんどん突き詰めていきたいです。
「(人形を)持っていない、遊んでいない人でもバビ撮りって面白いな、なんか好きだなと感じる人が少しでも増えたらうれしい」と語るコバリさんのバービー愛にあふれた展示に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。会期は6月30日(金)までを予定。(途中、追加展示の可能性あり)。詳しくは、コバリさんのSNSもあわせてご覧ください。
コバリさんのSNS
インスタグラム:@barbarayousou
Twitter:@Barbarayousou