私の大好きな日本とフィリピンへ恩返しができる活動をしていきたい
「アボットカマイ」リーダー・疋島ヘルミニアさん
人と接するのが大好きというフィリピン出身の疋島ヘルミニアさんは、1986年に来日。介護職に就く在日外国人のパイオニア的な存在で、外国出身者によるボランティアグループ「アボットカマイ」のリーダーです。すみだ多文化共生交流会の理事を務めるなど、積極的に地域の活動に参加しています。疋島さんが来日してからの話、将来の目標をお伺いしました。
-- 日本に初めて来た時の印象をお伺いします。
疋島:私は、フィリピンのマニラから来ました。最初に日本に来た感想は、街の中がきれいだという印象です。当時のフィリピンは、ゴミがあちらこちらに捨てられていて、環境的にあまりきれいだとは言えませんでした。また、日本の街の中で、人が静かだということです。フィリピンは、話し好きな人が多く、常に多くの子供たちが街中で遊んでいます。
-- 日本にすぐ馴染めましたか。
疋島:日本に来たきっかけは、20歳の時に日本人の方と結婚したことです。旦那さんとの暮らしは楽しかったのですが、フィリピンは家族が多く、常に家の中が賑やかだったので、日本に来た際は、友人もなく、日本語も話せず、ホームシックにかかっていました。
そんなこともあり、常に動いていないと落ち着かない性分でもあるので、お弁当屋さんでパートとして働き始めました。
-- 今は介護士として働いていますが、そのきっかけを教えてください。
疋島:何か資格を持ちたいと思っていた時に、偶然、外国人向けの「ホームヘルパー2級養成課程」の案内を目にして、介護の仕事に興味を持ち始めました。
「ホームヘルパー2級養成課程」の受講を終え、介護施設に面接に行くも、当時は、外国人介護職員を受け入れてくれる介護施設がなく、なかなか採用されず苦労をしましたが、福祉学校の関係者が「社会福祉法人賛育会」の施設長と知り合いだったことがきっかけで、同法人の介護施設で働くことができるようになり、今でもお世話になっています。
-- 介護福祉士国家試験に合格もされていますね。
疋島:「社会福祉法人賛育会」がサポートする「すみだ日本語教育支援の会」の日本語教室で学べたおかげです。教室では、主に介護現場で使用する日本語の勉強や介護福祉国家試験の対策も教えていただきました。
また、ここでは勉強だけではなく、多くの友人や日本での生活の悩みなども相談できる先生たちと巡り合うことができました。
-- ボランティアグループ「アボットカマイ」はどのようなきっかけで作られたのですか。
疋島:このグループも日本語教室の出会いから生まれました。今は多くの国の外国人が学んでいますが、当時はフィリピンの人たちが中心に学んでいました。フィリピン人は、明るく、踊ることも好きなので、そんな姿を見ていた先生が、先生の所属する「NPO法人てーねん・どすこい倶楽部」が主催するイベントのステージに出演してみてはどう、というお誘いがきっけで生まれました。その後、高齢者施設や小学校に訪問するなど活動の幅が広がりました。
-- 疋島さんの明るさが人の輪を広げていますね。
疋島:お国柄もあるかと思います(笑)。私自身が人と接するのが好きだということもあります。フィリピンで大学に通っていた時にベビーシッターもしていたのですが、人のお世話や誰かの役に立つことをしていきたいという思いがあります。私はおばあちゃんに可愛がられていたこともあり、高齢者とのおつきあいも楽しいです。
私に限らず、フィリピン人はフレンドリーに人と接するので、その明るさで、高齢者にも親しまれています。
-- すみだ多文化共生交流会の理事としても活動を行っていますね。
疋島:この会に入るのも日本語教室の先生からお誘いがありました。私も日本に来た時は、とても苦労したことがあります。日本に来て、まだ慣れない人たちのお役に立てばという思いと、私たち外国出身の人たちが地域ともっと関われる環境が生まれる機会ができればと思っています。
-- 今後の目標を教えてください。
疋島:フィリピンと日本の架け橋になれるような活動をしていきたいですね。夢は大きいんですが、フィリピンには日本人とのハーフの子供がたくさんいます。そんな子供たちに日本語を教えられる学校を作ってみたいなと思っています。日本語を学ぶことで、日本を好きになってもらいたいという気持ちと、フィリピンには、介護というシステムがありませんので、彼らが日本で学び、働き、将来には、フィリピンでも福祉環境が充実できればうれしいなと思っています。
まだ、外国人が介護の仕事に就くことのない時代に、自ら介護の世界に飛び込み、外国人に対する偏見をなくすよう実績を作り、さらに地域活動を積極的に行い、常にチャレンジ精神を失わない疋島さんの楽しみは、友人たちと一緒に過ごしている時間、子供や孫たちと年に一回のフィリピンへの旅行だそうです。また、この時間を得ることで、気分を一新し、日々の仕事や新たな挑戦に活力が湧くと言います。
疋島ヘルミニア(ひきしま・へるみにあ)
フィリピン・マニラ出身。1986年来日。2005年ホームヘルパー2級養成課程修了。同年、社会福祉法人賛育会・特別養護老人ホーム入職。2015年介護福祉士国家試験合格。2015年アボットカマイ設立。2017年さんいくハイツ東あずま(都市型軽費老人ホーム)入職。2020年特定非営利活動法人すみだ多文化共生交流会理事として参加し、多文化交流カフェ事業部会として活動。