「無視覚流」まちあるきで知る北斎と隅田川
11月4日(日)「無視覚流」まちあるきで知る北斎と隅田川 が開催されました。
このイベントは、東京2020オリンピック・パラリンピックを経た共生社会の実現に向けて、「視覚を使わない」ことで感じる世界を広げ、他者との差異を超えたコミュニケーションを図ることを趣旨とするもので、「無視覚流」の先達、広瀬浩二郎さんと隅田川の界隈を歩き、船に乗り、視覚に頼らず、聴覚や臭覚、触覚を働かせて、自らの感覚をひらき、まちあるきを体験するものです。
同イベントに視覚障害者14名を含む50名が参加。葛飾北斎が「須佐之男命厄神退治之図」絵馬を奉納した牛嶋神社で、広瀬さんの講義と点の体操を行った後にアイマスクをつけた人とサポートする人でペアを組み、船着場へ向かいました。
点の体操は、ペアの人に手引きをしてもらう際にお互いの信頼関係を作る上での準備体操です。手引きする際に、お互いの触れ合う点(自分の手と相手の肘)に意識を持って相手の動きを感じること、身の回りの状況を言葉で説明することが大切だといいます。
「北斎」という船名の屋形船に乗り、乗船後、すみだ北斎美術館の学芸員による北斎と隅田川にまつわる講話と江戸期の両国橋と現代の清洲橋を再現した模型、北斎の点字絵を触覚で体感することで、そのイメージを膨らませました。
アイマスクを装着して船のデッキに立つと、潮の香り、波の音、風や鳥の声などを視覚に頼らず想像することで、目で見ること以外の情景を感じることができました。
船内に戻り、江戸と現代の佃煮の食べ比べが行われました。徳川家康が好んだ白魚を再現したものと醤油を付け加えた佃煮、さらに砂糖を加えた現代の佃煮が用意され、アイマスクを付けて味わうと、辛味、甘味の風味がより際立ちました。
下船後、墨田区役所リバーサイドホールで広瀬浩二郎さんを囲み、振り返りトークが行われました。健常者、中途視覚障害者、先天性視覚障害の方それぞれの立場で、今日のイベント体験の感想や日常生活の話をされ、広瀬さんのコメントを挟みながら有意義なトークが行われました。
終始、面白い話を織り交ぜながらの話す広瀬さんのトークで、学びながらも楽しい時間を過ごし、イベントを伴にした方々との交流を深めることができました。
「視覚を使わなことは、身の回りの環境の情報は少なくなります。その代わり、想像と推理を働かせていくこと、頭で考え、触って情報を得ることで視覚を頼りにする以外の情報を得ることもできます」と広瀬さんは、語ってくれました。
【講師プロフィール】
広瀬浩二郎
国立民族学博物館准教授。
自称「座頭市流フィールドワーカー」、または「琵琶を持たない琵琶法師」。1967年、東京都生まれ。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から京都大学に進学。2000年、同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。01年より国立民族学博物館に勤務。現在はグローバル現象研究部・准教授。「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“さわる”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施している。最新刊の『目に見えない世界を歩く』(平凡社新書)など著書多数。
主催:墨田区
企画運営:公益財団法人墨田区文化振興財団
協力:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行員会、すみだ北斎美術館