男を上げるお洒落学【5】
Vol.5 シャツの胸ポケット
突然ですが、皆さんのシャツの胸部分にはポケットが付いていますか?
左胸にポケットが付いているシャツを着ている方も多いかも知れません。
今回はシャツの胸ポケットに関する話です。
シャツはもともと下着でした。
1920年代ごろまでは、長い裾の前後を股の下で留めることでパンツの役割まで果たしていたのです。
そのため、昔は「人前で上着を脱がない」のが常識でした。下着が丸見えになりますからね。
上着を脱いで良いのは、ウェストコート(ベスト)を着用しているときだけです。
今は上着を着用しないクールビズのような期間もあり、この考え方を完全に当てはめることは難しくなってきているとは思いますが、「本来の意味」を理解しておくのはとても大切なことだと思います。
本題に戻り、胸ポケットの話。
シャツは下着だったので、ポケットは付いていません。
日本にはその「本来の意味」を知る人はほとんどいなかったため、装いがカジュアル化するに従い、胸ポケット付きのものが多くなっていきましたが、欧米のビジネスシャツは今でもポケットがないものがほとんどです。
日本の有名なシャツ屋さんが数年前にニューヨークに出店した際、「なぜポケットが付いているんだ?」と驚くお客さんがあまりに多かったため、自社製品にポケットをなくすよう社長さんが社内に指示をしたと言う逸話があるくらい、日本の服飾文化はガラパゴス的な進化(?)を遂げてしまっていたのです。
もう一度言います。本来、シャツにポケットは付いていません。
しかし、シャツ売場に行くとポケット付きのものがほとんどです。
皆さんが次に買うシャツはどちらですか?
文章・写真 郷間裕(フィボナッチ紳士洋品店 店主)
フィボナッチ紳士洋品店
東京都墨田区墨田5-4-7
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