スプーンに映る世界の魅力 すみだスプーン愛好会

蒐集した世界のスプーンは10,000本以上
今年11月に開催された、すみだ生涯学習センター主催「ユートリヤ祭」の展示部門に「すみだスプーン愛好会」による希少な世界のスプーンが展示され、その美しさや珍しさに多くの来場者が目を奪われていました。
「すみだスプーン愛好会」代表の櫻井朋子さんと奥村一典さんにスプーンの魅力をお伺いしました。

Q:世界のスプーンを集めた動機を教えてください
うちで友人にカレーをご馳走したところ、「このスプーンは小さすぎる」と言われ、スプーンを買うことに。ヤフーオークションで探したところ、世界の珍しいスプーンが多数出品されており、その魅力に取り憑かれ、蒐集をはじめました。5年前のことです。
Q:コレクションした本数はどのくらいですか
現在は、10000本以上になります。単品で購入するより、コレクターが一気に手放す(断捨離、終活)物を購入する機会が多いので、あっという間に増えました。ヤフオクはもとより、送料無料のメルカリ、ラクマなどのオークションサイトの展開の時期も重なり、コロナ前はアメリカのオークションサイトeBayにも触手を伸ばしていました。
Q:スプーンに魅せられる理由を教えてください
一本のスプーンについて調べていくと、国、文化、経済、時代、文化、国民性などが見えてきて、世界が広がります。得体の知れないスプーンを発見すると、調べることに対して闘志が湧きます。(笑)
Q:国ごとにより、スプーンの特徴はありますか
14世紀ごろから銀の品質を管理して、毎年その年限定の刻印を今日まで刻んでいるイギリス。鉱物資源の宝庫で貴族時代には金、銀を用いた贅沢なスプーンを作っていたロシア。美しい街の景色が刻まれ、ふんだんに銀を用いたアメリカのスプーン。イギリスの銀の刻印が押された香港のスプーン。国が誕生する以前のスリランカのスプーン。チェコスロバキアで作られたお土産用の世界各国のスプーン。キリスト教関連ではイエス様や聖人、マリア様がモチーフのスプーン。イスラム教はシンボルの三日月や独特の幾何学模様を用いたスプーンが見られます。国の観点から見ると、その国の経済力や時代背景が見えてきます。


裏側にはシルバー800の印刻

Q:スプーンの歴史を教えてください
新石器時代のヨーロッパでは、陶器や骨を削ったスプーンがあり、古代エジプトでは、スプーンに化粧品を入れて使用していました。古代ギリシャ・ローマ時代には薬品の調合などにガラス製のスプーンが使われていました。
中世のヨーロッパでは、スプーンを使用できるのは限られた人たちで、庶民は手で食べていました。ヨーロッパ貴族時代には、銀食器はその家の財産のシンボルでした。
船舶、航空機の発達により、人々が世界を旅するようになり、カメラがない時代にはお抱えの画家が土地の風景をスプーンに描き、持ち帰ってお披露目するのが、新時代のお土産だったようです。
Q:コレクションの中でも珍しいスプーンはなんですか
骨董好きのイタリア人の友人と有楽町国際フォーラムの大江戸骨董市に出かけた際に目に留まり、購入したトイレのスプーンです。その時点では、いつの、どこのスプーンかわからなかったのですが、二人で色々調べた結果、オーストラリアのスプーンと判明しました。この調査のワクワク時間がたまらないです。

Q:スプーンにまつわる雑学があれば一つ教えてください
銀スプーンの手入れは物にもよりますが、一番安くて効果的なのは、100円ショップで売られている3枚100円の「シルバーアクセお手入れシート」がおすすめです。びっくりするほど優しくて柔らかい銀色が復活して、ストレス解消にもってこいです。
(写真)
Q:すみだスプーン愛好会について教えてください
コロナで街から人が消えるなど、街の様子が気になっていました。そんな折、在宅勤務となった私はスプーン購入に拍車がかかっていきました。どうせなら、集めたスプーンを展示して観て貰えば、少しはお役に立てるかな、一瞬でもスプーンを通して違う時代の違う世界に旅できれば楽しいかな、と展示の方法を考えていたところ、ユートリヤ祭の展示ケースの貸し出しを知り、利用させていただきました。その際に、すみだスプーン愛好会を発足しました。
展示は初めてで、スプーンを蒐集しています、といっても、誰にもイメージしてもらえないため、手応えが全く予想できませんでしたが、小学生の女の子がガラス越しにずっと世界のスプーンを眺めている姿、若い男性がアンティークのスプーンを熱心に見ている姿を見て、とても嬉しかったです。
今年のユートリヤ祭では銀のスプーンを磨くワークショップも開催してみました。また、展示の様子を動画に撮ってSNSにあげたところ、世界のスプーンコレクター仲間から、「私も行きたかった〜」とコメントをもらいました。日本では知名度の低いスプーン蒐集ですが、世界では蒐集家がたくさんいます。これからも、スプーンを通して楽しみ、その楽しさをたくさんの人たちと共有していきたいです。