墨田浪漫

墨田浪漫

あなたの子供の頃の夢はなんですか? あなたが本当にやりたいことは? 行きたいところは? 
夢・憧れ・冒険心。そんなニュアンスで使われる「浪漫」。
今回の特集は「墨田浪漫」と題して、すみだでご自分の憧れを形にし、冒険心を忘れることなく、さらなる夢へと突き進む、そんな「浪漫」あふれる方々を取材しました。

フィボナッチ紳士洋品店

店主 郷間 裕

郷間 裕

鐘ヶ淵駅から、北に4分ほど歩いた場所。ゆっくりとカーブした道を進むと突然その店は現れます。ヨーロッパの街並みから切り取って来たような店構え。藍色と炭色が合わさったようなブルーグレーの外壁に、ショーウィンドウからのぞくスーツやピカピカの革靴。それが、『フィボナッチ紳士洋品店』。オーダーメイドの紳士服と革靴を扱うお店です。

フィボナッチ紳士洋品店

店名の由来は、ひまわりの種の並び方など、自然物の中に数学的な規則性を発見した、13世紀のイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが名付けた「フィボナッチ数列」からとったもの。黄金比とも呼ばれ、自然物のみならず、ダビンチの「モナリザ」やエジプトのピラミッドにも黄金比が用いられていると言われる。ファッションにも着丈のバランス等、黄金比があると思っていて、そういった黄金比をお客様に提供したいと考えているそうです。

個性的な装飾の取手の扉を開けて中に入ると、カウンターの後ろからビシッとスーツを着こなした店主が出迎えてくれます。

店主の郷間さんは、千葉県柏の生まれ。高校が私服の学校だったこともあってファッションに興味を持ち始める。大学卒業後は、通信インフラを作る建設会社に就職。初任給で初めてのオーダースーツを購入する。

高校大学時代は、主にカジュアルな服装を身につけていたが、社会人になってからは、スーツや革靴にも興味を持ち始め、29歳の時に、本所吾妻橋にあった靴作りの学校に週末を使って半年間通ったのをきっかけに、ずっと靴作りをして生活できたらいいのにと思うようになり、30歳で山形にある革靴メーカーに転職。山形に引っ越して6年間過ごし、あとの6年間は浅草の東京営業所(と言っても一人の)に勤務。トータル12年間勤め上げました。

しかし、「ファッションは靴だけでは完結しない。トータルでお客様にお届けする仕事がしたい」と思うようになり、退職し約1年間、スーツの工場で勉強した後、2017年、ついに念願の自分の店をオープンさせました。

路面店に憧れはあったものの、資金的には、どこか雑居ビルの一室からスタートを模索していた矢先、親戚の持ち家だった物件の一階が空いていると聞いて、渋谷や青山のような賑やかな場所ではないけれど、ゆったりした時間が流れるこの場所で、ある意味隠れ家的な「こだわりのある店舗」ができるのではと、この地に出店を決めました。

フィボナッチ紳士洋品店
フィボナッチ紳士洋品店
フィボナッチ紳士洋品店

元は寿司屋だった物件の改装はまず、内装をデザインしてくれる人を探し、具体的なことには口を出さず、自分のやりたいこと、好きなファッション、お客様との接し方等、思いを伝えて形にしてもらい、壁の塗装は自分でも手伝った。寿司屋のカウンターがあった場所に、新たにカウンターを作ってもらい、畳の部屋も生かして試着室を作った。

試着室
元々の畳の部屋を生かして作った試着室。

これには、紳士洋品店という店名と同様に、和洋折衷をめざす郷間さんの思いが込められています。
英国好きだが、体型も気候も違う日本にそのままでは合わない。日本人がかっこよくスーツを着こなす為には、どんなデザイン・素材が良いのか常に考えます。

また、日本人が作ったものをどう日本人が使うか。昔は50%が国産だった革靴も今は70%が中国製。日本製はわずか5%と、この30年で職人の数が10分の1になった。

さらに、スーツにおいても、トレンチコートを作れる工場は日本に2箇所くらい。値段の問題ではなく、作れる人がいなくて作れない。この先、国産のスーツがなくなる可能性も…。日本の職人を助けるためにもフィボナッチでは国内生産にこだわっています。

郷間さんの好みは英国風の正統派。スーツ本来のブリティッシュスタイル。お客様の好みによってはイタリアっぽいファッションも提供できるが、ホームページの他、SNSやポッドキャストでの配信など、積極的に情報発信をしているせいか、割とブリティッシュ好きなお客様が集まってくるそうで、遠くは北海道から来店したお客様も!

「洋服に浪漫を感じて来てくださる方が多いと感じています。こだわりたい部分があれば是非お手伝いさせてください。」と郷間さん。

売れるかどうかわからないけど、自分がかっこいいと思ったモノを提案する。また、かっこいいだけじゃない、素材の特性やデザインの成り立ち・歴史もセットで提供したい。かつて自分がそうした接客を受けて楽しかったので、自分もそうしているとのこと。

自分が広告塔となって、好みを明確に打ち出すことで、共感いただいた方々に他では手に入らないものをご提供出来ると言います。

ホームページ・SNSをチェックして、好みが近い方はもちろん、オーダースーツに興味はあるけど一歩を踏みさせずにいる方も、是非一度相談してみてはいかがでしょうか。

フィボナッチ紳士洋品店

- フィボナッチ紳士洋品店 -

東京都墨田区墨田5-4-7
03-6874-3505
営業時間
月〜金曜 : 12:00〜20:00
: 12:00〜19:00
定休日:木曜

フィボナッチ紳士洋品店

BAR MOMO

店主 風間桃子さん

風間桃子

押上にある『BAR MOMO』は、夜な夜なウイスキー好きが集う、隠れ家のようなウイスキーバーです。
客層は20代が多く、次に30代40代。50代のお客様もいらっしゃるそうです。

店主の風間桃子さんは、北九州市の出身で、大学進学を機に埼玉へ。その後26歳で押上に引っ越して来ると、2018年には『第19代すみだ親善大使』を努めました。

そんな風間さんが、ウイスキー好きになるきっかけは、初めてお酒を美味しい!と感じたのがウイスキーだったそうで、新宿三丁目のバーでバイトを始め、ウイスキーについての知識も深めていきました。

押上に引っ越して来てからも近隣の飲食店を利用する中で、ご縁あって同じく押上にある『プッシュアップウイスキー』で働くことになり、3年間店長を務め、ついに昨年6月13日に周りの後押しもあり自分のお店『BAR MOMO』をオープンさせました。

スコッチのシングルモルトとジャパニーズウイスキーに力を入れているそうで、白州蒸留所をはじめ、富士御殿場蒸留所、そして今年の7月にはニッカウヰスキーの余市蒸留所へ見学にも訪れました。普段の仕入れは契約している酒屋さんの他に、両国の『テイスティングマーケット』というウイスキーとシードル専門のお店へ出向いて、マスターからオススメや色々な情報を教えてもらっているとのこと。

BAR MOMO

「今の仕事が一番自分に合っている」という風間さんは、ラジオでよく聞く『日本道路交通情報センター』に勤めていた時期もあり、決まった原稿を読むのではなく、決まった秒数で管制パネルを見ながら、どの情報を伝えるかを自分で取捨選択するというかなりハードな仕事をこなしていたそうで、すみだ親善大使のオーディションの際には、特技を披露して下さいと言われ、とっさに会場の窓から見えた首都高6号向島線の渋滞を見て、即興で交通情報を披露して見事、親善大使の座を射止めました。その話術は今の仕事場で遺憾無く発揮されています。

BAR MOMO
気軽に扉を開けてください。
美味しいウイスキーと楽しい会話で
おもてなしします。

現在は、インスタグラムでの発信がメインですが、今後は、YouTubeチャンネルを始めたいと考えているそう。また、「以前講師を呼んでウイスキーセミナーをやったが、今後は自分が講師としてセミナーを開催できるようになりたい」さらに、「夢は、近隣の飲食店と連携してウイスキーが好きな若い子たちがこの町に集まれるような環境にしたい」と話す風間さん。ウイスキーをめぐる浪漫は尽きません。

- BAR MOMO -

東京都墨田区押上1-26-5 コーポ野村101
営業時間:19:00〜不定
定休日:不定休
※支払いは現金かPayPayのみ

BAR MOMO

駄菓子屋
『かごやさん』

店主 ミヤコさん

ミヤコさん

昨年6月、鳩の街通り商店街にオープンした駄菓子屋『かごやさん』。

名前の由来は、この場所が以前は、竹かご職人がご夫婦で営む日用品店だったことから。

「ここら辺の人はみんな『かごやさん』って呼んでたから」と語るのは、店主のミヤコさん。
ミヤコさんは、生まれも育ちも鳩の街通り商店街。かつては三軒隣りに実家があり八百屋さんを営んでいました。

駄菓子屋 『かごやさん』

この駄菓子屋を開くきっかけは、長年続けて来たカゴ屋さんがご高齢でいよいよ店を畳もうかという話を聞いて、子供の頃からの夢だった駄菓子屋をやらせて欲しいとお願いしたところ、「ココでしか売ってない!」と遠くからもお客様が買いに来る「チリ紙」の販売を一部引き継ぐことを条件に駄菓子屋『かごやさん』をオープンすることとなりました。

開店時間は、平日の夕方4時から7時まで。その短い開店時間にたくさんの人が訪れます。

まず、向かいの寺島保育園終わりの親子が立ち寄り、しばらくすると今度は、小学生たちが遊びにやって来ます。その合間に常連さんや、犬連れのお客さんが…という調子で引っ切り無しにお客さんが訪れます。その全てのお客さんに分け隔てなく接するミヤコさん。いつもニコニコ周りがパーっと明るくなる様な笑顔と、スッと人の懐に入り込む絶妙な距離感とおしゃべり。お客さんもいつの間にか昔からの知り合いの様な口調で話し出します。

ミヤコさんは10年くらい前から音楽活動もしていて、施設の慰問等で演奏することが多く、司会も担当しているそうで、「人と接すること、会話することが好き」とのこと。納得です。

毎週火曜日は、愛犬のミニチュアダックスフント『もろた』と一緒にご出勤。

『もろた』の由来は、知り合いからもろたから。『もろた』用のおやつが用意してあって、ミヤコさんに言えば大人も子供もあげることが出来ます。『もろた』もよくわかっていて、人懐っこくおやつをおねだりします。「ウォフウォフ」と何やらしゃべっているのを聞いているとそのうちに「おやつちょうだい」と言っている様な気がしてきます。

駄菓子屋 かごやさん
駄菓子屋 かごやさん

壁には、近所の子供たちから贈られた手描きの絵が飾られています。「こういうお店が一軒あると、ちょっとは活気が出るでしょ」というミヤコさん。

自分が育った商店街を少しでも盛り上げたいと今日もお店に立ちます。

- 駄菓子屋 かごやさん -

東京都墨田区向島5-48-12
営業日時:月〜金曜 / 16:00〜19:00
定休日

駄菓子屋 かごやさん