大人気分で喫茶店
料亭きよし 女将 小林綾子
向嶋には今も十軒余りの料亭がありまして、都内最大の花街になっております。私は、そのうちの一軒である料亭きよしの三代目女将をしております。
私が子供のころは、料亭の二階の一部が、住まいになっていて、遊び相手といえば、仲居さんや、芸者衆でした。考えてみれば、ぜいたくなことですね(笑)
そんな私が気に入っていたのが、みんなに近所の喫茶店に連れて行ってもらうことでした。
私が注文したバニラアイスに、ストローでコーヒーをかけてもらったり、厚切りのバタートーストにグラニュー糖をかけて食べさせてもらったりしながら、大人に混じって話を聞いているのが、大好きでした。ちょっと私が大人の話に飽きてくると、ストローの包み紙を蛇腹にしたものに水をかけて、「ほら蛇が動くよ!」とか、同じ包み紙で手をつないだ人型を作って、アイスコーヒーのグラスに貼ってくてたりとか、他愛のない遊びも懐かしい思い出です。
大人になると早く大人になりたかった子供時分の気持ち忘れがちですが、今でも向嶋にある喫茶店に入るとちょっと思い出します。