素敵なお店。素敵な店主(男性編)

以前ご好評いただいた特集「素敵なお店。素敵な店主」。前回は(女性編)をお届けしましたが、今回は満を持して(男性編)の登場です!すみだには、まだまだ知られていない素敵なお店がたくさんあります。その中から編集部が気になったお店を訪ね、店主の思いやお店の魅力を取材しました。読んで気になったお店があれば、ぜひ気軽に立ち寄って、店主の方に会いに行ってみてください。きっと、すみだのまち歩きがもっと楽しくなるはずです。
(全6店舗・店主)
Cafeのらくろ
奈良和虎さん

墨田区京島に佇む「Cafeのらくろ」は、1969年に先代マスター夫妻が脱サラして始めた喫茶店。
店名は田河水泡作の漫画「のらくろ」に由来し、主人公の「のらくろ」が軍隊に入り、失敗を重ねながらも出世していき、やがて大尉にまで進級して除隊。その後、再招集されるも、軍は解散となり再び野良犬に戻った「のらくろ」はさまざまな職業に就くものの失敗続き、しかし最終的には喫茶店の店主として自立した。という物語から、かつて大手商社に勤め、企業戦士としてバリバリ働いていた先代マスターが喫茶店を始める際、この「のらくろ」と自分の人生を重ね合わせ店名に「のらくろ」とつけたそうです。

開店から30年後、先代夫婦も高齢になり、いよいよ店を畳んで田舎へ帰ろうかと話していたところ、常連だった奈良さんのお母様が、旦那様との初デートの思い出の店でもある「のらくろ」を無くしたくないと引き継ぎを申し出、息子の奈良和虎さんが2代目マスターを引き継ぐことになります。
先代からの引き継ぎは、たったの1日。ミートソースや玉子焼きを教わったもののさすがに1日では心もとないので、メーカーが主催する講習会に参加したり、かつて曳舟にあった珈琲家で1ヶ月半修行して「Cafeのらくろ」を再開させました。

最初は、先代の味を守ろうという気持ちがありましたが、途中からは、自分にできることをしよう!と気持ちを切り替え、時代に合わせて新たなものを取り入れたりしてきました。店内には近くに「宮城野部屋」が移転してきた時期もあり、力士ゆかりの品々が多く飾られ、またコロナ禍に購入した舞台小道具職人の手による本格的な兜は、今も訪れる外国人観光客から好評を博しています。名物はバランスの良いモーニングセットで、早朝から営業しているため民泊利用者や地元客に人気です。

黄色と茶色のレンガが印象的な外観のビルで、一歩中に入ると通りから差し込む自然光と抑えた照明の暖かい光に包まれて、いつ行っても落ち着く。そんな古き良き昭和の雰囲気を残す「Cafeのらくろ」は、今年で創業56年、奈良さんが引き継いでから26年。
今日も京島の街並みに溶け込み、世代や人種を超えて訪れる人々にやすらぎを届け続けています。
Cafeのらくろ
住所:墨田区京島3-54-10
営業時間:6:30〜20:00
定休日:日曜・祝日
小川凧店
小川光男さん

千歳三丁目、墨田区唯一の凧店「小川凧店」。
凧づくりは明治5年に始まり、商いとしては明治25年に創業。以来150年、四代にわたり和紙と竹の手作り凧を受け継いできました。
戦後に墨田へ移ると娯楽の少ない時代背景もあり凧は飛ぶように売れ、最盛期には早朝から問屋が行列し、一日で二千枚を仕上げたといいます。

現在は四代目・小川光男さんが店を守ります。幼い頃から凧づくりに親しみ、遊びに行く前に百枚の糸を張るのが日課でした。昭和40年代には海外製ビニールカイトの登場で経営が厳しくなり、平成14年に一度廃業しましたが、情熱を捨てきれず五年後に再開しました。
小川凧店は「絵」ではなく「創り」に専念する専門店。店内には、明治から縁を結ぶ橋本家の凧絵が並び、凧絵師・橋本禎造氏とその父の代から交流が続きます。

持ち込みイラストや習字をその場で凧に仕立てるサービス(2,000円〜)も人気。おしゃべり好きな小川さんとの会話とともに、一本の糸で大空とつながる醍醐味をぜひ味わってみてください。
小川凧店
住所:墨田区千歳3-4-9-101
定休日:不定休
Beric
笠原健太さん

セレクトショップ「Beric」は、曳舟駅の裏路地、ダックスフントのキャラクターの看板がある階段を登った先にあります。店主の笠原さんは墨田区立花生まれ、1歳で鐘ヶ淵に引っ越し、現在は曳舟在住。
小4の頃、NBA選手に憧れてバスケットシューズを集めたのが収集癖の始まりで、カウンターの後ろの棚には、私物のフィギュア等が飾られています。

『ダイナソー』や『ジュラシックパーク』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『インディージョーンズ』など冒険物やアクション映画も大好きで、こうした„好き"に囲まれたお店、ちょっと見つけにくいけど、居心地の良い隠れ家みたいなセレクトショップを開きたいと、長く物件を探し続け、諦めかけたその時、兼ねてから気になっていた2階の物件が空き、即契約。奥様とペンキを塗り、両親がカウンター等をDIYで制作し、1ケ月後にはオープンしました。

「ダメなら諦めもつく」と挑戦した店も今では大切な空間となり、続けたい思いが一層強くなっているそうです。人懐っこい笑顔とトークでリピーターを増やし、SNSや店頭で繋がったアーティストとのコラボも広がる「Beric」です。

Beric(ベリック)
住所:墨田区東向島2-30-10 2F
営業時間
日〜木 :12:00〜19:00
金・土:12:00〜20:00
定休日:不定休
初代 東京もんじゃらすK
神野誠也さん

▲ 店主の神野さん(右)と本所中学校のクラスメイトで、元ムエタイ世界王者の加藤督朗さん(左)現キックボクシングジムFAITH会長
2023年11月にオープンした「初代 東京もんじゃらすK」。
東京都信用保証協会から、創業スクールでの特別講師の依頼を受ける程、独自性の強いこのお店、ズバリ一言で表現すると飲食店でありながら…
リングスポーツLOVE!
プロレス・格闘技が子供の時から大好きだった代表の神野さん曰く、「悔しい。今の時代、ボクシングでさえ地上波で見られない。ならば俺の店で放送して、『見なくなった大人達』、『見たことの無い子供達』に見る機会を与え、少しでも興味を持ってもらおう!」この強い動機で、店内飲食のみで滞在時間が長く、そして墨田の土地の食べ物として、もんじゃを選択!

コンセプトがしっかりしているからこそ、料理は妥協を許さない。
オーソドックスなソース味の焼き物に加え、世界でここでしか食べられない特製料理と完全オリジナルドリンクの数々!全て、一貫している。

それは、美味しい鉄板料理、お酒をリングスポーツと共に少しでも楽しんで欲しい!この愛が匂い立つような唯一無二のお店。修行を積み開業し、まもなく三年目に入りますが、店内は驚くほど綺麗なので皆さん要チェックです。
初代 東京もんじゃらすK
住所:墨田区本所2-6-8
営業時間
平日:18:00~23:00
土日祝:15:00~23:00
定休日:木曜
ル プチ パリジャン
(LE PETIT PARISIEN)
石川 順一さん

▲ 物語に出てきそうな重厚な洋書。普段は鍵のかかった棚に保管されていますが、お願いすれば実際に触ることもできます。
曳舟駅から徒歩1分の場所に『オープンな書斎』があります。その名も「ル プチ パリジャン(LE PETIT PARISIEN)」。
店主の石川さんが趣味で集めていた本が増えすぎたため、置き場所兼、古本屋として始めたものの、大切な蔵書を手放すことに抵抗を感じ、一部を除き今では販売を行わず『オープンな書斎』として、明治大正期の日本の書籍や19世紀頃の洋書を中心に、貴重な本を自由に閲覧できる空間となっています。

石川さんは北海道出身で、大学進学を機に上京。服飾やコンピューター関係の仕事を経て独立しました。現在は、「蔵書票」についての研究がメインで、来年には、「蔵書票」についての本も出版予定。

「学生時代に神保町で見た本に衝撃を受けた体験がこの書斎のオープンにも影響しています。本の重みや手触り、匂いといった物質的な魅力も感じてほしい」。また校外学習で訪れる中高生にも、「図書館や博物館に展示されるような本が、ここでは実際に手に取って見ることができます。それぞれが何かを感じとってもらえれば…」と石川さん。
一見入りづらい雰囲気ですが、勇気を出して書斎の扉を開けてください。

ル プチ パリジャン
(LE PETIT PARISIEN)
住所:墨田区東向島2-14-12
営業時間
月・火・金・土・日
13:00〜18:00、19:00〜22:00
定休日:水曜・木曜
夜の営業は臨時変更の可能性があるため、事前予約がおすすめです。
臨時休業もあるためウェブサイトやSNSで、要確認
イプクレス・ラウンジ
(Ipcress Lounge)
阿部訓諭さん

一歩店に足を踏み入れると、独特の雰囲気で、一気に非日常へと引き込まれる「イプクレス・ラウンジ」は、1920〜60年代のロンドンのパブがテーマのバーです。

店主の阿部訓諭(あべさとし)さんは中学まで足立区で、高校時代を埼玉県草加市で育つ。中学の頃にはファッションに興味を持ち始め、私服で自由な校風の都立上野高校に進学。バイトの給料は、好きな服につぎ込んでいました。
高校卒業後、文化服装学院に進学。在学中から大好きなモッズファッションに身を包み、卒業後は就職せず、バイトで貯めたお金を持って、ロンドン放浪の旅へ。現地で古着を買い集め、街中やライブハウスでオシャレな人を見つけてはインタビューを行うなど独自にファッションを学びました。
帰国後しばらくは、ロンドンで購入した古着をネットで販売していましたが、ブランド物古着店の立ち上げのアルバイトをすることに。もくもくと仕事をこなしていると社長に根性を認められ、店長に抜擢!しかし、お店がオープンすると、社長からは売上、従業員からは不平不満で板挟み。ついに過労でドクターストップ。

次のアルバイトにと思って受けた、コットンタオルの製造販売をする会社の面接は実は、社員募集の面接で、面接官の方に気に入られ就職することに。工場管理や営業に携わり、成果を挙げるも人間関係の苦労から再び体を壊します。

その後フルコミッションの営業でなんでも売れる自信がついて、稼げるようにもなったので、27歳の頃、自身のブランドを立ち上げ恵比寿にオーダーシャツのお店を開業。昼は営業で走り回って、夜と週末にはオーダーシャツを作るという生活。その接客時に振る舞ったお酒や料理が評判となり、それを目的に来店するお客も現れました。
そんな生活をつづけて6・7年経った頃、当時シャツの縫製をお願いしていた職人さんが住んでいた曳舟に度々訪れるうちに、この土地に興味を持ち物件を探していると、今の店舗を見つけ、すぐに契約。ほぼDIYで店舗を改装し、移転しました。

店名は、おしゃれで大好きなスパイ映画『イプクレス・ファイル』(1965)から命名。古き良き英国パブをイメージした店内では、カクテルや英国風フードのほか、阿部さんの作るシャツも販売、最近では革を縫えるミシンを買ったので、レザージャケットの製作も。また、コロナ禍に始めたキッチンカーも「公園でお酒を売るというのが楽しくて性に合ってるから続けたい」と継続中です。
さらに現在は2階に宿泊施設を、隣の部屋にはショップ兼作業スペース兼倉庫を準備中。とにかくやりたいことがいっぱいで「やりすぎ!」と自分でも苦笑い。そんな独特な世界観と人当たりの良い性格が魅力の阿部さんが、優しい接客とおもてなしの心で迎えてくれる「イプクレス・ラウンジ」で、非日常体験してみませんか。

イプクレス・ラウンジ
(Ipcress Lounge)
住所:墨田区向島1-11-11 1F
営業時間:18:00〜22:00
定休日:月曜・日曜
変更の可能性があるため、訪問前にご確認をおすすめします。


