踏切一期一会

 日の照る昼間。僕は駅へ向かって歩いていた。反対側からは、女性が一人走ってくる。

 踏切の真ん中で、サンダルをレールに挟んで泣き叫ぶ子供がいる。その時、電車が通る警告音が鳴り響き始める。

 僕は徐々に下がるバーを片手で抑え、子供の元へ走る。反対側にいた女性は非常ボタンを押し、大声で電車へ呼びかける。

 こちらに向かってきていた電車は徐行し、僕がサンダルを取り出し子供を抱きかかえた頃には止まってくれた。僕は女性のいる側へ渡り、子供を放した。
「今度からは気をつけるんだぞ」
「うんお兄さんお姉さんはお似合いのヒーローチームだね」

 その言葉に、僕たちはお互い顔を見合わせて笑った。
「あ、公園行かなきゃ」
と、子供は走り去ってしまう。

 なんとなく、手持ち無沙汰になり女性に話しかける。
「先ほどは助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、私なんか。大したことはなにも…」
「しかし子供は無邪気ですね。もう行っちゃった。僕なんかまだ足がガクガクしてますよ」
「そうだったんですか?すごく立派でしたよ」
「全然全然」

 僕が謙遜した後、女性はペコっと頭を下げた。
「では、これで」

 僕はもう少し話していたかったが、女性は足早に去っていった。
(ま、これも一期一会か…)

 僕は危機に直面して早まる鼓動を独り鎮めつつ、次の目的地へ向かった。
踏切は危険だが、その一瞬一瞬すれ違う人と人が物語を生むこともあるのだ。

踏切一期一会

林 光太郎
墨田区在住。
長野県塩尻市出身。
人生どん底の頃、小説を読み、生き長らえた経験から、誰もが気軽に小説を読めるようにするため創作活動に勤しむ。古民家をリノベした本屋「ものはいいよう」を不定休で開いている。